高清水の蔵だより
杜氏の本音ちょっと出し
2018年08月23日
今季の酒造りが一段落した本社蔵 菊地杜氏、本社蔵 冨岡副杜氏のインタビューを掲載します。
ふたりが高清水の中で一番好きだという「上撰本醸造」と、地元の滋味を囲んだ和やかな席。ほかでは聞けない杜氏の本音が、ひとつ、ふたつとこぼれました。
本社蔵 5代目杜氏 菊地 格
──熟成中の酒質をチェックする「初呑み切り」が終わりました。今年の出来はいかがでしたか?
(菊地)今年は比較的ソフトな酒質になりました。同じ材料、同じ手法で造っていても、年ごとに味が変わる日本酒は本当に奥が深いです。新しい発見が多いので、興味が尽きることもありません。毎年この時期になると、来季の酒造りの始まりが待ち遠しくなります。
──このあとは、どのような作業工程が待っていますか?
(菊地)現在、本社蔵で熟成しているお酒を順次、世に送り出していきます。長年、高清水を愛飲いただいている方々に「いつもと変わらぬ味」をお届けするため、この後はブレンダーと協力し、味を固めていく作業に入ります。
──菊地杜氏の酒造りに対するこだわりを教えてください。
(菊地)特定名称酒ばかりに注目が集まる昨今ですが、我々は普通酒に対してもこだわりを持ち、特定名称酒と同様に手間暇をかけています。いつもの高清水を、安心して楽しんでいただけるよう最善を尽くす、それが私の酒造りのポリシーです。もちろん、純米大吟醸や大吟醸の造りも心血を注ぐ所存です。
本社蔵 副杜氏 冨岡 浩子
──熟成中の酒質をチェックする「初呑み切り」が終わりました。今年は冨岡さんにとって、どんな1年でしたか?
(冨岡)日本酒は本当に繊細な生き物だということを、改めて実感した1年だった気がします。たとえば、熟成中のお酒は貯蔵タンクの設置場所が違うと、それだけで味が微妙に変わってくる。タンクごとの特性や味の見極め方など、まだまだ菊地杜氏から教えられることが多いです。毎日が勉強です。
──そもそもどうして、冨岡さんは杜氏になろうと思ったのですか?
(冨岡)菊地杜氏や現場の蔵人さんと接しているうちに、自分も「飲んだ方が笑顔になれるお酒を造ってみたい」と考えるようになったのがきっかけです。また酒造りは昔から重労働なので、女性でもこなせる環境に変えることで、蔵人さんの負担を少しでも軽くしてあげられたらという思いもありました。まだ何も実現できていませんが、皆さんの励ましと先輩の教えを糧に、これからも本気で酒造りと向き合っていきたいと思います。